THE END of GW
「あ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「なっ?どうしたのアスカ?」
葛城家のリビング、寝そべってお菓子を食べながらTVを見ていたアスカが突然叫んだ。シンジは何事かとアスカの方を振り向いた。
「ア、アタシとした事が不覚だったわ・・・・」
お菓子の袋を握り締めワナワナと体を振るわせ、自分の不甲斐無さに苛立つ。
「一体どうしたの?」
「ふっ天才アスカ様とあろうものが・・・・・ふふふ」
「ねえアスカ、どうしたの?」
「ふう〜〜太陽が眩しいわ」
「アスカ〜〜」
声が聞こえていないのかシンジを無視して、ベランダから太陽を見上げ手で日差しを作る。
「・・・・アスカ、頭大丈夫?まさか朝の納豆が腐っていたとか?」
「大丈夫に決まっているでしょ!納豆は腐っているものなのよ!」
「そ、そうよかった」
今朝の納豆の賞味期限が昨日だったので、それでおかしくなったのかと心配したがアスカは正常でシンジはホッと安堵のため息をついた。
「それで大声だしてどうしたの?」
「そう!それよそれ!」
アスカの迫力のある声、ギュッとお菓子の袋を握る手にも力が入る。
「それって何?」
「ゴールデンウィーク」
「え?」
「ゴールデンウィーク」
「ゴールデンウィークがどうかしたの?」
「今日はゴールデンウィーク最後の日じゃない!アタシとした事がどこにも行っていなかったのよ!!」
叫ぶアスカ、だがシンジは冷静である。
「アスカ、毎日ゴロゴロしていたからね」
「そうよ、連休が長いから明日行こう、明日行こうって思っていたうちに最後の日になっちゃったのよ」
ムキ〜と悔しがりながら地団駄を踏みとテーブルに乗っているコップが揺れる。ついでにシンジも揺れる。
「そうだね、休みってどうして早く時間が過ぎるんだろうね」
しみじみ連休中の事を思い出すシンジ、毎日家事で汗を流していた。
「出かけるわよ」
「えっ?」
「出かけるって言っているのよ。最後の休み、出かけないと罰が当たるわよ、さっさと用意をしなさい」
「え〜〜〜?この後洗濯するんだよ」
渋るシンジ、だがアスカはシンジの胸倉を掴み持ち上げ睨みつけた。
「んなもん、いつでもできるでしょうが!ゴールデンウィークは今日で終わりなのよ!さっさと着替えてきなさい」
「は、はい!」
蛇に睨まれた蛙のように震えると着替えるために速攻で部屋に戻った。
「さあて、アタシも着替えないとね」
急いで戻るアスカ。
「アスカまだ〜〜?」
男の着替えは早い、それにましてアスカに脅されたものだからなおさら早い。
「まだよ、男だったらうじうじ言わない」
「はあ〜〜〜」
すでに10分以上は待っているシンジ、テーブルに肘をつくとため息をついた、これで何回目のため息だろうか?
「あ〜〜あ、せっかくの洗濯日和なのに、アスカの気まぐれには本当に困っちゃうよ」
ぼかっ!
「痛っ」
不意にシンジの頭を痛みが襲う、振り向いてみると・・・・
「ア、アスカ・・・・・」
「誰が気まぐれよ、さあ出かけるわよ」
「う、うん」
少し声がうわずるシンジ、それもそのはずアスカの格好は黄色のワンピース、初めて会ったときの洋服であった。薄い口紅をしており、アスカの美少女を一層引き立たせている。
「それでどこに行くの?」
「アンタバカ〜?そんなもの男のアンタが考える役目でしょう」
「そ、そんなあ〜〜」
アスカの言葉に落胆するシンジ。
「さあどこに行くの」
「・・・・・・・・」
考えるシンジ、だがそうすぐに行き先が思いつくものではない。
(どこに行くって言ったって・・・・どうしよう、早く言わないと殺されちゃうし、逃げよう)
「シンジ!聞いているの?」
(逃げても殺される、逃げちゃダメだ!考えよう・・・・デパートは・・・・・どうせ奢らされるんだろうな、小遣いが無くなっちゃうよ・・・・・ネルフ、広いから見てまわるってものいいかも・・・・・ビンタくらっちゃうよ・・・・・う〜〜〜ん、お金が掛からなくて、楽しめる所・・・・・・・・!)
「シンジ!」
「芦ノ湖に行こう」
「芦ノ湖〜〜?え〜〜〜つまんないわよ」
「そんな事無いよ、涼しいから気持ちいいよ」
「アタシとしてはデパートなんかがいいのよねえ〜」
「絶対に芦ノ湖が良いよ、絶対に気に入るよ」
「やけに進めるわねえ〜〜」
そうである、芦ノ湖はお金を使わなくてすむ、遣ったとしてもせいぜいジュースやボート代だけですみ、デパートより遥かに安上がりシンジの小遣いは火の車にならない。
「そ、そんな事ないよ。ボートに乗ったら楽しいよ」
「そこまで言うのなら行きましょうか」
(ほっ、良かった)
芦ノ湖に決まりほっするシンジ、二人は電車に乗り芦ノ湖に向かった。
「ふ〜〜〜〜ん、まあまあね」
芦ノ湖に着いたアスカの第一声。人はまばらでありユックリと時間を過ごせる。
「来て良かったでしょ」
「まあね」
素っ気無い返事をすると周囲を見まわす。
「あっ!ボート、シンジ!ボートに乗るわよ」
「うん」
二人でボート乗り場に向かいお金を払う。
「シンジお願いね」
「う、うん」
払う気が無いアスカさっさとボートに乗り込む、シンジは財布から口惜しそうに500円を取り出すと店員に渡した。
「あれ?アスカが漕ぐの」
「当然!ボートに乗って漕がないなんて罰が当たるわよ」
アスカはドンと座るとオールを握り締め漕ぐ気満々である。シンジはその様子をニコニコ微笑みながら座った。
「んじゃあしゅっぱ〜〜〜〜つ、うおおおおおおおおおお!!!」
バシャバシャバシャビャシャビャシャ!!
「う、うわ〜〜」
強烈な勢いで漕ぐアスカ、シンジは体勢を崩しボートから落ちそうになる。
「ア、アスカもうちょっとスピード落してよ」
「何言ってんのよ、ボートは速く漕ぐのがドイツじゃ常識なのよ」
「・・・・・・・」
ハッキリ嘘だとわかる。落ちないようにボートの端をシッカリ握りながらアスカの顔を見た。
「どう速いでしょ?」
(ふふ、シッカリ楽しんじゃって)
驚異のスピードで湖を一周する・・・・・・
「ぜえぜえぜえぜえ・・・・・」
「アスカ〜大丈夫」
「だ、大丈夫よ、ぜえぜえぜえぜえ」
湖を高速で5周したアスカ、ボートを岸に止め休憩、流石に息は乱れ肩で息をしている。
「ジュース買ってこようか?」
「ぜえぜいぜえぜえい・・・・お願い」
シンジはヒラリとボートから降りると販売機に走った。
「僕はコーラを、アスカはどれが良いかな?」
販売機、1000円札の皺を伸ばし投入口に入れ、ペットボトル500mlのコーラを押した。
「アスカは・・・・天然水で良いかな」
続けてペットボトル500mlの天然水を押し、返却口からお金を取り出す。
「出費が押さえられて良かった〜〜〜」
お金を財布に入れポケットに入れると、走ってボートに向かった。
「コーラは揺れないようにするのがコツなんだよな」
「アスカお待たせ、天然水で良かった?」
「ん、ありがと」
息の乱れが無くなり、ジュースを受け取ると、一気に喉に入れる。
「ぷはあ〜〜、生き返るわ〜〜〜」
ガソリン満タン、復活したようである。
「どうするまだ漕ぐの?」
「代わって」
今度はシンジが漕ぐ事になった、コーラを一口飲むとオールを握り締め漕ぎ出す。
「う〜〜〜〜ん!う〜〜〜〜ん!」
「なに〜〜?力ないわねえ、全然進まないじゃないのよ」
一生懸命漕ぐが時速が2kmも出ていない。
「アスカみたいに怪力じゃないから」
「何ですって!!アタシが怪力〜〜〜」
アスカの顔が瞬時にSALに変わった。
「い、いいえ違います」
「今度言ったら、突き落とすわよ」
「は、はい・・・・」
睨まれ縮こまる。
「ふうふうふうふう」
ようやく湖の中央に着いた、シンジは汗びっしょり。
「まったく、これだけの距離で息があがるなんて情けないわよ、もっと力を付けなさい」
「う、うん」
「ほら、汗を拭きなさい」
アスカはポケットから赤と黒のチェックのハンカチを取り出しシンジに渡した。
「う、うん」
受け取り顔の汗を拭き取る。
(・・・・良い香り、アスカの匂いがする)
鼻下の汗を拭く時、柔らかな香りがシンジの頬を桜色に染める。
「シンジ、顔赤いわよ、大丈夫?」
「え?あ、な!だ、だだ大丈夫だよ。ハ、ハンカチありがとう」
まだ完全に拭いていないが、言葉に詰まりながら返した。
「ん〜〜〜風が気持ち良いわね〜〜」
「立つと危ないよ、落ちたりしたら大変だよ」
揺れるボートの上、シッカリと足は肩幅に広げバランスを取る。
「アタシが落ちるわけないでしょ、シンジじゃあるまいし」
「ひ、ひどい」
「こう気持ち良いと叫びたくなるわね」
スウ〜〜と息を吸い込む。
「バカシンジ〜〜〜〜〜〜!!!!」
アスカの声が芦ノ湖に木霊し、来ていた一般人は一斉に二人を見た。
「ア、アスカやめてよ恥ずかしい」
みんなに見られた事で恥ずかしく顔を赤らめ俯くシンジ、だがアスカは・・・
「あ〜〜あ、気持ち良かった。もう一回叫ぼう」
スウ〜〜と息を吸い込む。
「ミサトの樽腹〜〜〜〜〜〜!!!!」
「ア、アスカ〜〜〜」
「スッキリスッキリ」
満足して座る、ニコニコ顔である。
「叫んだらお腹空いちゃった、何か食べましょ」
「うん」
シンジはオールを持つと漕ぎ始めた、慣れたせいか先ほどよりもスピードがアップしている。
「ハンバーガで良い?」
近くにハンバーガショップがある、他にもレストランがあるが出費を押さえたいのでシンジはハンバーガショップに歩いていく。
「レストラン」
「うっ!」
アスカの一言に仰け反り汗がでる。
「奢ってあげるわよ」
「えっ?」
耳を疑った。
「だからアタシが奢ってあげる」
「ウ、ウソ、お金にせこくて守銭奴のアスカが奢ってくれるなんて・・・・まさか明日がサードインパクト?」
パッチ〜〜ン!!!
乾いた音が響き、シンジが飛ぶ。
「アンタ、アタシの事をそんな風に思っていたの?アタシは守銭奴なんかじゃないわよ」
「いたたた、でもいつも僕に奢らしているのに、今日は奢ってくれるなんて・・・・」
「バ〜〜カ、さっきジュースを奢ってもらったでしょ、そのお礼よ」
「でもジュースとレストランじゃ・・・・・」
シンジは怖かった、何か買わされるのではないかと。
「何もないわよ、アタシがレストランで食べたいだけ。行くわよ」
シンジの手を取るとレストランに入っていく。
「さあ好きなものを選びなさい」
「う、うん」
メニューに目を通しながらもアスカの表情が気になり品が決まらない。
「アタシはビーフハンバーグにしようかな、決まった?」
「う、うん・・・僕は素うどんで・・・・」
一番安い品である。
「はあ〜?そんなのにするの、お金なら気にしなくて良いのよ。和風ハンバーグにしなさい」
「う、うん」
「よし決まりね」
アスカはウェイトレスを呼ぶと注文する。
「ねえアスカ、お金は大丈夫なの?」
「大丈夫よ、バッチリ持ってきたから ほら」
お気に入りの赤い財布を見せる。
「何てったって大枚をいれて・・・・・あっ」
財布の中身を見たアスカの動きが止まった。
「どうしたの?ま、まさか!」
シンジの頭に最悪の事が浮かんだ。
「な〜〜んて、ウソよ」
アスカの手にはバッチリお札が握られていた。シンジは力が抜けた。
「もう驚かさないでよ」
「ふふふ、アタシが忘れるようなミスなんてしないわよ」
「寿命が縮んだよ」
「今の表情最高だったわよ。まさにドッキリで騙された瞬間の間抜け顔」
「ひどいな〜〜」
「ふふふ」
「あはは」
二人のテーブルから楽しい笑い声、GWの最終日アスカにとって満足した休みであった。
連休中家でごろごろアスカちゃん、出かけても疲れるだけなんですけどね。シンジ君は主夫なので休みはありません(笑)
休みとなると出かけたくなるアスカちゃん、早速シンジ君を誘ってデート?良い休みでした。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION THE END of GW